すべての10代に、意欲と創造性を。
「カタリバ」は、どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくり出す意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する認定NPO法人です。高校への出張授業プログラムから始まり、東日本大震災以降は、子どもたちに学びの場と居場所を提供。育った環境や受けた教育によって生じる「きっかけ格差」の解消に取り組みながら、現在は全国で16の事業を展開し、学校や地域にいる子どもたちに多様な学びと出会いを届けています。
SOUND COUTUREは、東京都・高円寺から中野へのオフィス移転に伴う空間設計のタイミングで参画し、音による空間の在り方を再構築しました。

音による、空間のリフォーム
移転先は既存の建物をリノベーションした施設で、構造的な変更が難しい中、SOUND COUTUREに求められたのは、”音”による問題解決でした。2階、3階に点在する会議室や個室では、オンライン・オフライン問わず日々多くの会話が交わされます。中にはプライベートで、センシティブな内容も含まれます。
施設の構造を変えることが難しい中、会話内容が外に漏れてしまうという問題がありました。
そこで”音”による「マスキング効果」を実現するため、既存のスピーカーに加え、32台のスピーカーを増設。3種のサウンドをレイヤー構成し、空間全体に環境音を分布させることで、音によるマスキングと空間演出の両立を図りました。単なるノイズではなく、そこに関わる人の心と知覚に働きかけるデザインであることを大切にしています。






「カタリバ」らしさを探る、
対話型のデザイン
加えて、1階のスペースには頻繁に子どもたちが訪れ長い時間を過ごすことを考慮して、安心感や心地よさを損なわず、円滑なコミュニケーションを促すようなサウンドである必要がありました。
デザインの出発点としたのは、現場スタッフの声。サウンドサンプルを5案用意し、アンケートとディスカッションを通して30名以上のコアメンバーの意見を収集。「カタリバ」らしさとは何かを丁寧に読み解きながら、音の方向性を定めました。
最終的に導き出したのは、“子どもたちの願いや想いが天に昇っていく”という情景を音で描くこと。上昇するアルペジオ、集中を促す116BPMのテンポを中心に据えつつ、エリアによっては87BPMのリラックステンポを活用。用途に応じた空間体験を設計しています。ホワイトノイズも現場の環境に合わせてブレンド調整し、効果的なマスキングを実現しました。




空を見上げた、あの日の感覚を音に
SOUND COUTUREがこの空間に込めたのは、“あの日ここから見上げた景色。空に描いた夢。それが今のわたし。”というメッセージです。
未来を自由に描く「画用紙」のイメージを元に、画用紙と色鉛筆のサンプリング音も取り入れました。単なるBGMではなく、長く愛され、この場所の思い出に静かに寄り添う”設え”としての音として、日々の営みを支えています。

